カテゴリー別アーカイブ: 富士山

風景写真とバガヴァッドギーター

Nikon D810A + AF-S 14-24mm f/2.8G ED
Nikon D810A + AF-S  Nikkor 14-24mm f/2.8G ED

オーディオブックを日常的に聞く習慣がついてもう10年近く経つ。ドライブや散歩やジョギングなど集中力をあまり要求されないタスクをこなしているときにBGM代わりに聞くだけで、新たな知識を得ることができるので日常生活の大きな楽しみのひとつになっている。ここ数年は日本語のタイトルも増えてきたが、英語圏におけるオーディオブック市場の大きさは圧倒的だ。ある程度のセールスがあった本はすべてオーディオブック版も作られていて、最新のフィクションから古典まで楽しめる。というわけで近頃は写真撮影をしているときも一通り設定が終わると、オーディオブックを聞きながらシャッターを切る瞬間を待つのだが、ここ数日はエクナス・ イスワランがサンスクリット語から英語に訳した『バガヴァッド・ギーター』を聞きながら過ごしている。

『バガヴァッド・ギーター』は紀元前3世紀頃に書かれた聖典で、『マハーバーラタ』という巨大な叙事詩の一部となっている。マハトマ・ガンディーをはじめとする多くの偉人達に多大な影響を与えてきたのだが、日本ではそれほどポピュラーではないかもしれない。肉親との骨肉の争いに直面して「もうこんな戦いは嫌だ」と泣き言をならべるアルジュナ王子を彼の師匠であるクリシュナ(ヴィシュヌ神の8番目の化身)が叱咤激励しつつ解脱への道を解説してしまうと言うストーリーだ。ちなみにインドではお釈迦様(仏陀)はヴィシュヌの9番目の化身といわれていて、化身を意味するサンスクリット語のアヴァタラ(अवतार)は英語のアヴァター(avatar)の語源にもなっている。

クリシュナ曰く

『君の職務は行為そのものであり結果ではない。結果を目的にしてはいけない。無為に執着してもいけない。アルジュナよ、執着を捨て義務を遂行するのだ。成功と失敗は同一であると知れ。完全なる心の平静をヨガはもたらす』

富士の向こうに薄雲がかかっていたので劇的な夕焼けを期待して家を出た。良い結果を期待して撮影に出かけたわけなので、結果を目的にしていると解釈できてしまうが、絵になる風景を求めて撮影に出かけるというのは写真家のダルマ(職務)の範疇にはいる行為だろう。

Nikon D800E + AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8E ED VR
Nikon D800E + AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8E ED VR

自分の知識や経験にもとづいて、撮りたい絵が撮れる可能性が高い場所に向かうというのは風景写真家ならば当然おこなうべき行為だ。しかし、人間が自然現象をコントロールすることは不可能である以上、ひとたび撮影場所と時間を決定したら、自分で制御可能なことのみに専念する。たとえば、そのシーンを切り抜く最良の画角の選択だとか、構図をいろいろと試すとか、フォーカスをしっかり合わせるとか、露出を適切に設定するとかそういうところで最善を尽くす。劇的な夕焼けが訪れるか、月並みな夕暮れで終わるかはコントロールの埒外であり、そういうことに一喜一憂しないで、結果がどうであれ自分自身の行為に満足するように心がける。

ちなみにここで言う「ヨガ」とはフィットネスクラブで行う体操ではない。西洋や日本では「ハタヨガ」という流派の「アーサナ」と呼ばれるポーズの事をヨガと呼んでいるが、床に座ることを禅と呼ぶようなもので、ヨガという言葉の本来の意味と懸隔している。ここでクリシュナが説いているのは、行為を通して悟りへと至る「カルマヨガ」であり、フィットネスのエクササイズのことではない(だがエクササイズという行為そのものにカルマヨガを応用することは可能かもしれない)。バガヴァッド・ギーターの後半ではクリシュナへの絶対帰依を通して解脱へと至る「バクティヨガ」や叡智を通して悟りへと至る「ニャーナヨーガ」についても説かれているが、今回は触れません。個人的にはニャーナという響きは猫っぽくて好きですが。

This was how far I could apply the knowledge of the Gita to my photography. I’m sure I will gain more insights from this ancient wisdom and apply them to my everyday life as I read (and listen to) it over and over. But I can safely say that it wasn’t too difficult to detach from the fruit of my action in this case since I love nature in any form.

長野へぶらりと日帰り旅行

Nikon D810A + AF-S Nikkor 70-200mm f/4G ED VR
Nikon D810A + AF-S Nikkor 70-200mm f/4G ED VR

長野への日帰り旅行に行ってきました。風景写真の作品撮りがメインなので一箇所にずっと留まって絶景を狙い続ける事も多いのですが、たまには色々なところを巡って、手持ちでスナップをたくさん撮るのも楽しいです。
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SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art

Diamond Fuji from the Southern Alps
Nikon D800E + SIGMA 24-105mm f/4 DG OS HSM | Art
HDR image created out of 4 brackets to expand the dynamic range.

多くのカメラマンは大三元と呼ばれるf/2.8通しのズームレンズをまず揃えたがるものですが、私が愛用しているメインの標準ズームレンズはシグマArtシリーズの24-105mm F4 DG OS HSMです。このレンズで数万枚の写真を撮ってきたので、その魅力について私なりの考えを書いてみたいと思います。

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秋の行楽は富士五湖エリアに限る5つの理由

Yuga Kurita Kawaguchiko Fujisan Maple Trees_KS14974Nikon D600 + AF-S Nikkor 24-85mm f/3.5-4.5G ED
Nov 8, 2013 at Kuwazaki, Lake Kawaguchi

秋の行楽はどこに遊びに行こうかとお悩みの皆さんには、私が住んでいる山梨県の富士五湖エリアをお勧めしたいです。以下に5つの理由を挙げましょう。

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厳しくも美しい南アルプス(後編)

Yuga Kurita Mount Fuji from Southern Alps Akaishi Mountains Mount Eboshidake Nikon_4E04130Nikon D800E w/ AF-S Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5G ED

このポストは後編です。前編はこちら。

吹雪いてきて視界がなかったので、下山したのだが、40分ほど降りたら急に晴れだした。頂上に戻って富士山を撮影するのか、それともこのまま下山するのか、僕は選択を迫られた。もう13:00だ。冬至が近く日は短い。あと3時間半で日の入りである。頂上に戻って夕焼けを狙うなら、山頂近くに一泊しないとならない。僕は迷った。一度「帰るモード」に入ってしまうと、また攻めるという気分になかなかならない。当たり前だが、何の保証もないのだ。山頂に戻っても、また曇りだして富士山は見えないかもしれない。ふと空を見上げると、薄い雲がすごい勢いで流れていく。時折、太陽の光を浴びて虹のように輝くのが美しい。

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厳しくも美しい南アルプス (前編)

Yuga Kurita Mount Fuji Southern Alps December Winter_DSC0785Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G

最近の富士山撮影熱は過熱する一方のようで、車ですぐ行ける有名な撮影スポットに行くと大勢のカメラマンがいる。もちろん、良い人も多いのだが、残念ながら「富士山好きに悪い人はいない」といえる状態ではない。スポットがちょっと有名になると、ゴミが散乱する。私は撮影スポットのゴミをしばしば拾って帰るが、きりがない。完全に無名のスポットが知る人ぞ知るマイナースポットになると、ゴミが一気に増える。メジャーなスポットは流石に周りの目があるので捨て難いのだろう。心が醜い人間は誰も見ていない時に本性を表すものだ。ずいぶんと後ろから広角で撮影して、前に人が来ると怒る人もいる。最初に来たからといって、場所を独占しても良いというものではないと思うのだが、譲り合いの精神というのが無いらしい。更には、後から来ておいて、後ろから広角で撮りたいからそこをどけ、とか言い出すちょっと信じられないメンタリティの人もいる。人のヘッドライトやペンライトが少しあたっただけで、激怒して怒鳴りだす人もいる。高齢者のほうが道徳的だったのは、昔の話です。

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水面の富士は、夢幻の如くなり。

Yuga Kurita Lake Saiko Mount Fuji Reflection_KE06536
Nikon D800E w/ SIGMA 35mm f/1.4 DG HSM

富士五湖の中で一番マイナーなのが西湖だ。写真の数も他の4つの湖に比べて明らかに少ない。理由はいろいろあるが、一番大きな理由は足和田山の存在だろう。足和田山には五湖台、三湖台、紅葉台などの富士見スポットがあるのだが、西湖から見ると、これが手前にあって富士山の頭しか見えない。しかし、西側奥の入江地帯からは比較的優雅な富士山の姿を見ることができる。ここは逆さ富士も撮りやすく、なかなかの鑑賞スポットだ。西湖湖畔では、ここが唯一の富士山撮影スポットと言って良いだろう。
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日本の原風景ってなんだ?

先日、コスモスと富士山の写真をアップロードしたら、スロヴァキアの方から思わぬ反応を頂いた。曰く、コスモスの原産地はメキシコで、それが明治時代になって日本に渡来した。そして、日本で爆発的に増殖して、秋の風物詩として定着した。美しい写真だが、生態系にとって好ましくないことだ。

なんと、100年ちょっとしか経ってなかったのか! コスモスがたった百年余りで日本全国に爆発的に増えたということは、よほど日本の風土と相性が良かったのかもしれない。しかし、その影響で日本原産の植物が衰退した可能性もありそうだ。ついつい、綺麗だったらそれでいいじゃん、と思って撮りがちだが、真剣に考えたほうが良い問題なのかもしれない。

Yuga Kurita Mount Fuji Terraced Rice Fields Lycoris radiata_9E49437
Nikon D800E w/ SIGMA 24-105mm f/4 DG OS HSM

富士に棚田に彼岸花。あ〜これぞ日本の原風景! しかしながら、曼珠沙華の原産地は中国の揚子江で、稲作とともに中国から伝わったという説が有力らしい。
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( ゚д゚)ハッ! そうか、お彼岸か!

YUGA KURITA Mount Fuji Taikanzan Dawn_DSC7785

Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 18-140mm f3.5-5.6G ED VR

さて、平日だし、久しぶりに晴れそうだから箱根でも行って富士山を撮るか〜、と午前3時前に家を出て大観山に向かった。ちなみに大観山の発音は「たいかんざん」である。「だいかんざん」では無い。なんでも日本画の大家である横山大観が、ここから富士山を描くのが好きだったので「たいかんざん」になったそうだ。「横山大観すげ〜!」この話を聞いた時、私は思わず唸ってしまった。明治以降に活躍した人で、それほど大昔の人でも無い。それでも、自分の名前をこんな立派な山に残すなんて、もの凄い偉業ではないか! しかし、待てよ、じゃ横山大観が現れる前は、この山はなんて呼ばれていたの( ・ω・)モニュ? という疑問が当然湧いてくる。どうやら、この山は昔から景色が良かったので大観山(だいかんざん)と呼ばれていたそうだが、横山大観にあやかって濁らない「たいかんざん」に呼び方を変更したという説があるようだ。実際に箱根新道の「芦ノ湖大観インターチェンジ」は「だいかん」と発音するようだから、昔ながらの地名は「だいかん」なのかもしれない。しかしながら、信頼性の高そうなしっかりした情報源は探しだすことができなかった。この辺りはまた今後も調べていきたい。

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