私は写真や動画や翻訳や通訳ガイド等で生計を立てていて、エコノミストではありません。が、20年ほどフリーランスで生きているので景気の変動にはそこそこ敏感です。グローバルリセッション、つまり世界的な景気後退というのは、フリーランスや小規模事業主にとってはハリポタにおける「ヴォルデモート」みたいなものなので、できれば口に出したくない。しかし、観察される様々な事象から推測するに、実は2019年の春または夏あたりからすでにグローバルリセッションが始まっているのではないか? という考えを持つようになりました。
自分の生業からの推察
私はここ数年ストックフォトやストックフッテージに力を入れています。これは撮影した写真や動画をストックエージェンシーと呼ばれる会社に登録しておくと、写真や動画を欲しがっているお客さんが購入し、エージェンシーの手数料が引かれた金額を入手できるというものです。1年や2年頑張ってもあまり結果は出ませんが、5~10年間ぐらい地道に積み上げれば、それなりのパッシブインカム(受動的収入あるいは不労所得)が手に入るのが魅力です。
ストックを初めたのは2012年ですが、本格的に力を入れだしたのは2017年の頃からです。もともとは写真が中心でしたが、2017年末からは動画も販売しています。ストックというのは登録されている写真や動画が多ければ多いほど収入も増えるので、基本的に右肩上がりで収入は増えていました。
しかし、2019年の春をピークに登録数が増えているにも関わらず、収入の伸びは鈍化し、ついには前年同月割れが頻発するような状況になったのです。
最初は自分の作品の中でとりわけヒットしていた動画と写真の需要が一段落ついたのに、新たなヒットが生まれないのが原因かと思っていたのですが、同業者であるていど本格的にやっている人たちがみんな大同小異というような状況にあることがわかりました。
それでもまだグローバルリセッションという言葉は頭の中になく、ストック業界自体が曲がり角に来ているのかと考えていました。
なお登録数が2000以下程度の規模でやっている人は、販売しているコンテンツが増える速度が早いの伸びている人もいると思います。
金の値段が上がっている
さて、社会人歴があるていど長い皆さん、前回のリーマンショックの時を思い出してみましょう。グローバル・リセッションになって相場が上がったものはなんですか? 金と日本円です。スイスフランも退避先の通貨なので上がるはずなのですが、前回のリーマンショックの時はスイス政府がスイスフランに上限(1ユーロ=1.2フラン)を設定するという荒業に出たのでそれほど上がりませんでした。
さて金の価格を示した上の図を見てください。一目瞭然の右肩上がりです。インドに大量の金が埋蔵されていることが確認された、というニュースが最近ありましたが、まったく影響を受けずに上がり続けています。もうこれを見た瞬間にかなりやばいのがわかります。しかも見事に2019年の春過ぎから上がり続けていて、ストックにおける私の収入の下落と完全にリンクしちゃってます。
退避先通貨としての役割を終えた日本円
日本円はもはや退避先にならないと言い切ってしまうのはまだ早計かもしれません。が、今日のレートで110.79円ということで円高にはなっていません。実はすでにグローバルリセッションに入っていたことに我々日本人がなかなか気づけなかった理由がこれです。今までは円が上がりましたからね。
この状況下で円高になっていたら悲鳴を上げている人も多いでしょうから、ある面ラッキーだとも言えます。しかし、長期的な視野でこのことを認識すると、不景気になっても円が上がらない、というのは日本経済がかなり本格的にやばくなってきたということを示していると思います。
ベテラン達が不景気警戒モードに突入
私よりもフリーランス歴が長い人や会社を長期間経営している人たち、30年以上のキャリアを持つベテランたちが、そろそろ不景気が来るんじゃないかと準備しているんですよね。80年代のバブルもミレニアム前後のITバブルも先のリーマンショックもすべて乗り越えてきた人たちですから、彼らの判断は無視できません。
短期的に時流に乗って派手に稼ぐ人たちをたくさん見てきましたが、みんな消えちゃいました。攻めるだけでは残れません。
不景気はどれぐらい続くのか?
前回のグローバルリセッションは日本ではリーマンショックと呼ばれますが、これはある種の和製英語でして、世界的には『グレート・リセッション』と呼ばれ、リーマン・ブラザーズの破綻はあくまでもその中の1つのイベントに過ぎません。
一応アメリカ政府が公式で認めている期間は2007年12月から2009年6月となっています。が、実際にはもっと長く、インフレ分を調整した本当のGDPが元の水準に回復したのは2011年Q3、つまり約4年後です。
リーマン・ブラザーズが破綻したのは2008年9月15日。前回のリーマン・ブラザーズに相当するのが今回はドイツ銀行ではないかと噂されています。
前回の不景気が4年弱だったので、今回は2~3年ぐらいかな? 2022年前後からまた世界経済は伸びていくのではないでしょうか。
グレートリセッションは世界大恐慌(グレートディプレッション)以来最悪の不景気と呼ばれているので、今回はそこまでは悪化しないのではないか、と個人的には思っています。というか希望しています。
不景気が10~20年に1度起こるというのは、今までも必ずあったし、今後も避けられない事なので、さっさと終わって回復期に入ってほしいところです。
ちなみに日本ではそのまま円高不況に突入し、2011年3月17日に1ドル76円25銭まで円が上がりました。なんで死に体の日本の通貨がそんなに上がるんだ? 買いかぶりすぎだろう。と、当時は思いました。
歴史的円高は阪神大震災と東日本大震災のすぐ後に記録された、という点も覚えておいたほうが良いですね。保険会社が支払いのために海外資産を売却して円にするはずだ、との憶測が流れたことが原因のようです。
長い目で見れば世界経済は回復するはず
なぜならば世界人口は増え続けているからです。人口が減っている日本が好景気になる要因は少ないですが、世界経済はつながっているので、グローバルで経済が伸びれば日本も少しはおこぼれがもらえるでしょう。
もうしばらくの間は中国が世界経済を牽引すると思います。その後はインド、そしてナイジェリアを中心としたアフリカ諸国が経済発展を遂げて世界経済を牽引してくれるはずです。
2100年頃に世界人口は110億前後に達し、そのあたりで落ち着くと予想されています。数ある未来予測の中でも、人口推移の予測は比較的信頼性が高いので、おそらくそうなるのでしょう。
問題はその後です。現在の資本主義は成長し続けるという前提で成り立っているので、2100年以降の人類社会ではポスト資本主義が必要になります。
または、無理やり成長し続けるために、AIを搭載したアンドロイドに人権のようなものを与えて消費者にするかもしれません。このネタでSF小説を書きたいな〜と10年ぐらい前から思っていますが、まったく書けません。そうこうしているうちにユヴァル・ノア・ハラリが著書でこのアイデアを言及してしまった。アイデアってひらめいただけじゃ無意味なので、形にしないとね。
ちなみに1982年にピーター・ラッセルという人が『グローバル・ブレイン』というニュー・サイエンス系の本を上梓していて、その中で世界人口は人間の脳細胞の数に相当する100億前後で落ち着くと予言しているんですよね。中学生の頃に読んで半信半疑でしたが、すごい! 当たっている!