Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 85mm f/1.8G
綺麗な写真が撮りたい! と思った人がまず購入するのは、デジタル一眼レフカメラ本体とキットレンズだろう。初心者のうちはスペックの意味を理解できないので、「入門機」「プロ機」などというカテゴリーを頼りに購入する。少し経験を積むとレンズの重要度を理解して、明るいf値の単焦点レンズを購入したりする。クリップオンストロボ、三脚、専用Lプレート、アルカスイス雲台・・・ 徐々に、初心者の頃には用途すら理解できなかったものにまで手を出していく、そうやって、ステップアップしていった結果、最後にたどり着くのはなんだろうか? そう、手袋とストラップである。
ニコンが先日リリースした「ND フォトグラファーズグローブ NPG001」は大人気のようで、入手まで一ヶ月待ちという話も聞いたことがある。私は運良く去年のうちに入手して使い込んできたので、そろそろレポートしてみたい。
Nikon D800E w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
このグローブはインナーグローブとアウターグローブに分かれているのだが、マイナス2-3度ぐらいならばインナーだけでも十分暖かい。このインナーグローブはスマホ対応である。氷点下の中、素手で長時間スマホを弄ると凍傷の原因になるので、これは重要なポイントだと思う。そして、指先が少し尖った作りになっているお陰で操作性はなかなか良好だ。通常のグローブでは困難なレンズの手ぶれ補正スイッチのON/OFFや電池の交換なども、インナーグローブを装着した状態で問題なく行える。
そしてアウターグローブだが、これは3本指のロブスタータイプのミトンだ。ミトンのほうが保温の効率が良いのだが、普通のミトンでは人差し指を独立して使えないので操作性が劣ってしまう。そこで、親指と人差指を独立させて、残り3本を一つにまとめることによって、操作性と保温性を両立したのが、ロブスタータイプのミトンだ。いいとこ取りのハイブリットである。そして、このアウターグローブは人差し指と親指にスリットが入っていて、そこから指先を出すことができる。通常のダイヤル操作やシャッターボタンの押下などは、アウターグローブ越しに行い。より細かな操作の時だけ、人差し指と親指をスリットから出すことができる。
Nikon D800E w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
必要最低限の長さだけ指先を出せるようになっている点も白眉だ。操作に必要な指先だけを出せるので、保温性の損失を最小限に抑えることが出来る。アウトドア製品にも指先を出せるミトンはあるが、私の知る限りこの製品を超える保温性を持つロブスタータイプの物は無い。
このアウターグローブには手首の部分にベルトが付いて、裾の部分も紐を引っ張って締めることができるようになっている。これで、より高いフィット感と保温性を確保すると同時に、雪の侵入をほぼ完璧に防ぐことが出来る。冬山に登ったことがある人ならわかると思うが、中に雪が侵入してしまったら、そのグローブは「お終い」だ。帰って乾かすまで、無用の長物になってしまう。予備がない場合は凍傷のリスクがかなり高まる。雪中で撮影する場合は面倒臭がらずに必ず締めて欲しい。
寒い場所で長時間撮影するときに気になるのが、指先の冷えだ。指先を温めることももちろん重要なのだが、手首や足首を温めて血行を促進すると、指先も暖かくなる。このアウターグローブは裾の部分がかなり長く手首をすっぽりと包んでくれるので、そいういった観点からもとても好ましい。
¥11,800という価格を高いと感じる人もいるかもしれない。しかし、同等の保温性を誇るロブスターミトンをチェックしてみるとむしろ安いことがわかる。例えばBlack Diamondのソロイスト・フィンガーはほぼ同じ値段だ。ニコンのNPG001はほぼ同等の保温性を誇りつつ、指先が出せて、インナーグローブも付いてくるのだからコストパフォーマンスは非常に良い。ニコンのカメラのユーザーはもちろん、他社のカメラを使っている方にもおすすめしたい逸品である。私の知る限り、極寒地での使用にも耐える写真家向けのグローブというのは、他にチョイスがない。
NIKON D800E W/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
素晴らしい製品なのでべた褒めのレビューになってしまったが、一つだけ要望もある。もし、モデルチェンジすることがあれば、少々高くなっても良いので、アウターグローブの革以外の部分に、ゴアテックスやアウトドライといった、防水透湿性素材を使用して欲しい。そうすれば雪中での信頼性が更に高まると思う。
私は、革の手入れと撥水性の維持のために、モンベルのS.R.レザーシューズスプレーを使って手入れしている。少々の雪ならば、これで全く問題ない。激しく雪が降っている時は、更にヘリテージのWindstopperオーバーミトンあたりを加えれば安心だと思う。
体の中で一番凍傷にかかりやすいのが手と足の指先です。最悪のケースでは切断しないとならないので、極寒地で撮影する人はグローブと靴はケチらないで投資しましょう。ちなみに靴については、車移動用にモンベルのパウダーブーツ、登山用にLa SportivaのNepal EVO GTX、靴下はモンベルのメリノウール エクスペディション ソックスを使用しています。
次回はNikonとBlack Rapidのコラボで生まれたクイックドローストラップについてレポートします。
※WordPressをサブディレクトリ型で多言語化する作業に伴い、2019年12月26日に日本語部分だけを切り離して投稿。