NiSi ND-VARIO Pro Nano バリアブルNDフィルター

NiSi Pro Nano1.5-5 Stops Enhance ND-VARIO paired with the Panasonic Leica 12-60mm F2.8-4 and GH5

NiSi Pro Nano1.5-5 Stops Enhance ND-VARIO paired with the Panasonic Leica 12-60mm F2.8-4 and GH5

普通のNDフィルターよりもバリアブルNDフィルターのほうがずっと便利だ、という事実は昔から知っていた。が、画質の面で満足できるバリアブルNDフィルターに出会うことはなかったので、面倒くさいなと思いながらも複数のNDフィルターを使用していました。

特に問題になるのが安いNDフィルターに現れるムラで、『X』のような形に暗い部分が現れてしまうことがあるため、英語ではよく『X effect』などと表現されます。NiSiのND-VARIO Pro Nanoではムラがまったく出ない、という話を聞いたので早速試してみました。この商品には67mm, 72mm, 77mm, 82mm, 95mmという5つのサイズが用意されていますが、いろいろなレンズで使用したいので82mmのものを選びました。

到着した商品をチェックしてまず気がつくのが品質の良さです。スマートフォンを作っているHuaweiなど、近頃は中国のメーカーも良質な製品を製造するメーカー増えました。NiSiもそのような高品質系中国ブランドのひとつだと思います。しっかりとした作りと適度なトルク感のあるスムーズな回転には感心しました。

NDフィルターの典型的な使用方法としてすぐに思い浮かべるものが4つほどあります。

1.明るい単焦点を日中に使いたいPanasonic GH5 + SIGMA 35mm F1.4 via Metabones Speedbooster XL 0.64x with NiSi ND VARIO ProPanasonic GH5 + SIGMA 35mm F1.4 via Metabones Speedbooster XL 0.64x with NiSi ND VARIO Pro. 1/8000 at wide open (approx. f/0.9)

まず第一に、晴れた日の昼間に明るい単焦点レンズを使用して撮影するケースが考えられます。近頃はPanasonic GH5を使って手持ちのスナップ撮影をすることがしばしばあります。これにMetabonesのスピードブースターXL(0.64x)経由でSIGMA 35mm F1.4 ARTをつけるとちょうど標準画角になってなかなか使いやすい。ちなみにこのスピードブースターは画角を0.64xにして、明るさ(f値)を1段と1/3明るくするというすぐれもので、f/1.4のレンズはだいたいf/0.9ぐらいで使えることになります。GH5は拡張でISO100まで下げられますが、基準感度はISO200なので、上の作例のようにf/0.9を昼間使う場合にはNDフィルターが必要になる、という訳です。

2. 日中に屋外でフラッシュを使いたいYuga Kurita NiSI Vario Sakura_E125724
Nikon D800E + AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8E ED VR with NiSi Vario Pro ND 82mm (flashlight synced at 1/200 sec. shutter speed)

NDフィルターが必要になる2つ目のケースとしては、逆光のシーンなどで日中にフラッシュを使って撮影する場合です。通常、フラッシュがカメラに同調できるスピードは最短で1/250秒程度なので、小さなf値で撮影したい場合はNDフィルターが必要になります。普通は被写体ブレや手ブレを防ぐために最短の同調スピードで撮影することになると思いますが、ISO感度を基準感度、シャッタースピードを1/200秒なり1/250秒に固定して、任意のf値で撮影する場合にはバリアブルNDが便利です。

3. 長秒露光

_A108368-KegonWaterfalls_Yuga_Kurita

Nikon D810A + 24-70mm f/2.8E + ND16 + NiSi 82mm ND-VARIO Pro Nano (3 sec. exposure)

3つ目のケースとして挙げたいのが長秒露光の写真を撮影する場合です。たとえば滝や渓流の写真を撮影する場合に数秒程度の長めのシャッタースピードで撮影すると、水の流れを白糸のようにスムーズに表現することができます。上の作例は華厳の滝にてNiSi ND-VARIO Pro Nano 82mmを使用して撮影しました。

ND1000以上の暗いNDフィルターを使って、分単位の長秒露光写真を撮影するのが私は好きです。とりわけ、日の出や日の入り前後の長秒露光写真は、ノイズリダクションに同じ時間が掛かることを考えると1枚ずつしか撮影することができないので、思い入れの強い写真を撮影することができます。下に挙げた作例は夕方に撮影した15分間の長秒露光で、NiSi ND-VARIO PRO NANO 82mmをND1000と組み合わせて使用しています。このショットでは露出の前半、つまりまだ太陽の残光がかなり残っている時間帯は一番暗くなるまでND-VARIOをまわして、レンズに入ってくる光を最大限制限し、その後、徐々に開いて露出が終わる15分後にはNDの効きを一番弱くしたものです。このようにすることによりだんだんと暗くなる状況で、均一に光を集めることができます。

Nikon D810A + 24-70mm f/2.8E + ND1000 + NiSi 82mm ND-VARIO Pro Nano

Nikon D810A + 24-70mm f/2.8E + ND1000 + NiSi 82mm ND-VARIO Pro Nano (900 sec. exposure)

4.動画

最後になりましたが、バリアブルNDがあって本当に良かった! と、つくづく思うのが日中に動画を撮影するときです。私はもともとスチール写真専門でしたが、近頃はPanasonic GH5を使用して動画の仕事もよくしています。スムーズな動画を撮影するときに大事なのがシャッタースピードなんですね。これが速すぎると動きがカクカクしてしまってとても不自然。適度な被写体ブレが動画では大事です。通常は、フレームレートの半分の長さ、例えば30fpsならば1/60秒程度が最適なシャッタースピードだと言われています。つまり日中はNDフィルターがないとカクカクした動画しか撮れないということです。ND8やND16程度のNDフィルターを使って撮影することもできますが、バリアブルでないと最適なf値よりも更に絞り込まなければならない、あるいはISO感度を上げないとならないケースが出てしまいます。また、複数のNDフィルターを持参して、シーンごとに付け替えるというのは大変な手間です。可変NDフィルターを内蔵していない機種で動画を撮影する人には、良質なバリアブルNDフィルターが必携のアイテムだと言えます。NiSi ND-VARIOは色ムラや解像度の低下もなく、減光効果にもムラが無いので、動画を撮影する人にはとても満足度が高いアイテムだと思います。

下に埋め込んだ動画はPanasonic GH5とNiSi ND-VARIO Pro NanoをつけたPanasonic Leica 12-60mm F2.8-4で撮影しました。明るさがスムーズに変化していくのがよく分かると思います。

色の変化は?

NDフィルターを使う際には色の変化も気になるところです。 NDフィルターをつけた場合とつけない場合の色の変化を比べるために取り急ぎ裏庭に生えている木を撮ってきました。本当は富士山を撮るとよいのでしょうが、本日は生憎と曇っていて富士山は見えないのです。Nikon D800EにNikkor 24-70mm f/2.8E ED VRをつけて絞り優先モードで撮影しています。露出補正は1/3段ステップで行われるため微妙に明るさが違う点を留意してください。

NDフィルターなし

Without ND ()

Without ND (1/50sec., f/6.3, ISO100, WB Cloudy)

NiSi ND-VARIO 1.5段減光の最小設定With NiSi ND Vario Minimum (1/13 sec., f/6.3, ISO100, WB Cloudy, Aperture Priority Mode)

With NiSi ND Vario MIN (1/13sec., f/6.3, ISO100, WB Cloudy)

NiSi ND-VARIO 5段減光の最大設定With NiSi ND MAX
With NiSi ND Vario MAX (1sec., f/6.3, ISO100, WB Cloudy)

こうやって比較してみると色が微妙に変化しているのがわかります。とはいえ、この変化は必ずしも悪いものではなく、このケースの場合はむしろつけたほうが色被りがなくスッキリしているように見えます。1.5段と5段でほとんど変化はないようですね。つけるとほんの少しだけ色が変わります。いずれにせよ簡単に修正できる範囲内の変化だと思います。

解像度

解像度が悪化するんじゃないかと心配している人がいたので、この点についても検証してみました。上の写真の等倍切り出しです。

NDなし

No ND

ND-VARIoあり(1.5段最小設定)NiSi ND VARIO Minimum (1.5stops)

ND-VARIOあり(5段最大設定)NiSi ND VARIO Maximum (5 stops)

少なくとも3600万画素+大三元ズームの組み合わせではまったく解像度の低下は見られませんでした。NDを付けるときにほんのすこしだけカメラが動いてしまった点はご容赦ください。

結論

NiSi ND-VARIO Pro NanoはNDフィルターを多用する人にはとても便利な商品です。色ムラ、明るさのムラ、解像度の低下等、安いバリアブルNDフィルターを使用した際に見られるネガティブな副作用もありません。値段も¥15,200〜(67mm)なのでコストパフォーマンスも良好だと思います。動画も撮影する人にはとりわけおすすめできる商品です。

この商品を買う場合、よく使うレンズのフィルター径よりも一回り大きいサイズにしておいたほうが、いろいろなレンズで使い回せて便利です。その場合、ステップアップリングを使用して、フィルター径を調節するのですが、ステップアップリングは必ず滑り止めのローレット加工が施されたものを選びましょう。滑り止めがないと撮影現場で交換するのが困難になり、最悪の場合ペンチとかプライヤーのお世話になってしまうこともあります。

便利さ故に付けっぱなしになることが多く、ノブがあるためレンズフードもつけられないので、傷がつかないように専用のキャップあるいはカバーを用意してくれるとありがたいな、と思いました。この点はメーカーに要望を出しておきます。

※WordPressをサブディレクトリ型で多言語化する作業に伴い、2019年12月26日に日本語部分だけを切り離して投稿。