Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
最近の富士山撮影熱は過熱する一方のようで、車ですぐ行ける有名な撮影スポットに行くと大勢のカメラマンがいる。もちろん、良い人も多いのだが、残念ながら「富士山好きに悪い人はいない」といえる状態ではない。スポットがちょっと有名になると、ゴミが散乱する。私は撮影スポットのゴミをしばしば拾って帰るが、きりがない。完全に無名のスポットが知る人ぞ知るマイナースポットになると、ゴミが一気に増える。メジャーなスポットは流石に周りの目があるので捨て難いのだろう。心が醜い人間は誰も見ていない時に本性を表すものだ。ずいぶんと後ろから広角で撮影して、前に人が来ると怒る人もいる。最初に来たからといって、場所を独占しても良いというものではないと思うのだが、譲り合いの精神というのが無いらしい。更には、後から来ておいて、後ろから広角で撮りたいからそこをどけ、とか言い出すちょっと信じられないメンタリティの人もいる。人のヘッドライトやペンライトが少しあたっただけで、激怒して怒鳴りだす人もいる。高齢者のほうが道徳的だったのは、昔の話です。
という訳で最近はオフシーズンの登山にハマっている。駐車場から15分程度歩けばスポットに着いてしまう新道峠は混雑するが、1時間ほどかかる三ツ峠だとそこまで混まない。ましてや山小屋が閉まった後の平日の南アルプスでは、カメラマンはおろか人っ子一人誰にも会わない。逆に言えば遭難しても、誰も気づかないというリスクもあるのだが、人間界の軋轢から離れて、自然と対話するのが目的なのだから、登山はオフシーズンに限る。
天気が微妙なのは分かっていたが、どうも「呼ばれた」気がして、鳥倉林道ゲートまで車を走らせた。家からだと南アルプスの逆側に回る形になるので、4時間ほど掛かった。富士山が撮りたくて麓の富士吉田に引っ越してきたというのに、長野までドライブしてから登山して富士山を撮影するなんて、我ながら酔狂なものだと思う。小降りながら降雪していたので、少し逡巡したが、直感を信じて登ることにした。「てんきとくらす」の登山指数は、「風または雨が強く登山に適していない」ことを示すCだった。果たして生きて帰れるだろうか?
南アルプスを長野側から登るので、山頂付近まで出ないと富士山は見えない。烏帽子岳山頂付近で撮影して、風を凌げる位置まで下がってビバークしてから、小河内岳に縦走する予定だ。
Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
110リットルのバックパックに6.5リットルのサイドポケットを2つ付けている。重量は30kg近い。押しつぶされそうになりながら、登山道入り口まで林道を歩いた。普通ならば40分程度の林道歩きだが、何しろ荷物が重い。登山道入り口まで50分ほど掛かった。しかし、この頃はまだ元気だった。
Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
曇天の下、登山道をてくてくと登っていく。荷物が重い上、雪で滑りやすくなっているので、やはりペースは上がらない。14:00には三伏峠に到着して、15:30ぐらいに烏帽子岳山頂に着く予定だったが、三伏峠に着いた頃には、既に日が暮れだしていた。初日の富士山撮影は諦めて、三伏峠の冬季小屋で一泊させてもらうことにする。小屋と言っても、営業期間外で暖を取ることはできないので、中はマイナス10度ぐらいの寒さだ。それでも、雪風凌げるだけありがたい。
翌朝は暗いうちに起きて烏帽子岳山頂を目指した。しかし、雪が降っている。山頂についても富士山は見えないだろうけど、ここまで来たらせめて山頂に立ちたい。
三伏峠から烏帽子岳までは、無雪期に軽い荷物で登るならば1時間も掛からない。しかし、三伏峠付近から積雪量が一気に増えて、ラッセルを強いられた。また、道が大変わかりづらい。辺りを見回しても雪ばかりで、赤テープも殆ど見えない。何度も登山道から外れながら、道無き急坂を強引に登った。12本爪のアイゼンがないと無理な芸当だと思う。なんとか、烏帽子岳山頂についた時には10:30を回っていた。通常なら一時間掛からないルートを5時間近く掛けて登ったことになる。
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山頂についた時には雪は少し降っている程度だったが、曇っていて眺望は全くなかった。気温はかなり低かったが、風はそれほど強くなかったので、せめてもの記念に持参した「吉田のうどん」を食べていくことにした。
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あまりにも寒くて、うどんがあっという間にぬるくなった。本当はここから小河内岳を目指す予定だったが、吹雪いてきて視界がかなり悪くなったので、断念して下山することにした。
山の天気は気まぐれだというが、まさにその通りだ。烏帽子岳山頂から40分ほど降りたところで、嘘のように急に晴れだした。
Nikon D5300 w/ AF-S Nikkor 50mm f/1.8G
うぉおおおっ! 南アルプス! なんと神々しいのだ、悪沢岳! そうだ、俺は神の領域に紛れ込んでいたのだ。視界が無かったので実感がなかった。
おそらく山頂に戻れば富士山も見えるだろう。ここで僕は選択を迫られた。山頂に戻って富士山を撮るのか、このまま下山するのか。既に13:00だ。冬至も近いので日の入りは早い。山頂に戻れば、もう今日中に下山できないだろう。さて、どうする!?
※WordPressをサブディレクトリ型で多言語化する作業に伴い、2019年12月26日に日本語部分だけを切り離して投稿。