復活のガネーシャ

私の二回目の個展『富士物語|自然の聲』が盛況のうちに幕を閉じ、二週間に渡る私の東京での生活も終わった。私にとっては年に一回の個展が一つの区切りのようになっているので、夏至が元日のようなものだ。

DSC03307
Sony Alpha 7 + Canon New FD 50mm f/1.4 via a mount adapter

家に帰ると、個展が始まる前に注文していたオーダーメイドの額がちょうど届いた。額に収めるのは布に描かれたガネーシャの絵なのだが、これは約20年前にインドのプシュカルという町で買ったものだ。長期放浪旅行中だったのでなるべく余計なものは買わないようにしていたのだけど、4000ルピーで職人が手描きで作ってくれるというので頼んでみた。

インドに行くと観光客はみんな騙される。特に日本人はカモにされる。ある程度長期滞在しているとふっかけられるのに慣れてきて、インド人を信用しなくなるのだが、私はこの町に来る前にヴィパーサナという瞑想をやっていたので、すっかり心が浄化されていた。この時期は人を疑うことができず、ホイホイと言い値でいろいろな物を買ってしまったのだが、そのうちの一つがこのガネーシャだ。
最初はにこにこと笑って制作を依頼したのだが、同じ宿に泊まっていた西洋人が「あんたそれ高いよ。ふっかけられてるんじゃないの?」と言ってきたため、私の心に疑念が生じた。だんだんと不機嫌になっていく私の機嫌を取ろうと「気に入らないところがあれば直しますから!」とインド人の絵師が言ってきたので、ネズミの目を三回ほど描き直させた記憶がある。今となってみれば、職人が一週間ほど掛けて制作するのだから4000ルピーはそう高い買い物ではなかったと思う。実際に出来は良い。もう少し気持ちよく払ってあげれば良かった、と今になってみれば後悔するが、当時の私は20代半ばの若造で馬鹿だった。

_9E59856Nikon D800E + AF-S Nikkor 14-24mm f/2.8G ED

実家の押入れの襖が破れていたのでそこに貼り付けていたのだけど、実家が取り壊されることになったので回収して、家で保管していた。東京から帰ってきた次の日に額が届いたので、さっそく額装してみたのだが、これが凄く良い。めちゃくちゃ気に入った。やっぱり自分が好きな絵や写真を額装して家に飾るのって凄く大事なことだと思う。見るたびに気分が良くなるんだったら、安いもんです。

『夢をかなえるゾウ』で日本でもかなり有名になったガネーシャさまですが、当時の日本ではまだあまり知られてませんでした。私は女神転生シリーズが好きだったのでインドの神様の大半はすでに知っていて、インドでいたるところに神様のポスター等が貼ってあるのを見てとても嬉しかった。

※WordPressをサブディレクトリ型で多言語化する作業に伴い、2019年12月26日に日本語部分だけを切り離して投稿。