長秒露光は哲学だ。

YUGA KURITA Mount Fuji Chureito Slow Shutter ND filter_4E00245

Nikon D800E w/SIGMA ART 24-105mm F4 DG OS HSM

写真撮影の経験をある程度積むと、ライティングの重要性に気づくことになる。ポートレイトや物撮りなどでは、いろいろと自分でライティングを工夫することが腕の見せどころになったりする。素人と玄人の差が出るところだ。しかしながら、富士山のような自然風景の場合は、何しろ被写体が巨大なので基本的には自分でライティングはできない。したがって、自然が良い感じでライティングしてくれるように場所や時間を吟味して撮影に出かける。もちろん、自然は必ずしもこちらの思い通りには動いてくれないので、空振りも多くなる。

昨日はずっとどんよりと曇っていたのだが、何故か富士山ははっきりと見えていた。ライティング的には冴えないので、伝統的な風景写真家の多くは撮影しないと思う。しかし、雲が多い日は長秒露光で雲を流してダイナミックな写真を撮るチャンスでもある。最近は富士山がなかなか見えないのでフラストレーションがちょっと溜まっていた。あまり条件は良くないが写欲はあるので、富士吉田市のシンボル忠霊塔がある新倉浅間公園まで撮影に出かけた。

そして撮ったのが最初の一枚。Kenko PRO ND 1000SIGMA DG Wide C-PLを付けた上に、ISOを50に落とし、F11まで絞って30秒露光した。しかし、まだ雲の動きが不十分だ。その後もシャッタースピードをもっと長くして撮ったが、どうも満足するものが撮れないまま、富士山は雲に隠れてしまった。

Yuga Kurita Mount Fuji Black and White Long Exposure Clouds_KE45124

Nikkon D800E w/ SIGMA ART 24-105mm F4 DG OS HSM

このショットは同様にND1000とC-PLを付けた上にF18まで絞って273秒露光した。105mmテレ端で1.2xクロップモードで撮ったので、画角は126mm相当です。

調度良いぐらいに流す絶妙のシャッタースピードも大切だが、それ以上に雲が動く方向が大切だったりする。下のショットを撮った時はうまくこちら側に雲が動いてくれてダイナミックな感じになった。

Yuga kurita Mount Fuji Long Exposure Night

Nikon D600 w/ AF-S Nikkor 14-24mm f/2.8G ED

ちなみに長秒時NRをONにするとシャッタースピードと同じ長さの時間余分に待つことになるので、倍の時間がかかる。シャッタースピードが10分だと20分待つ。これをやらないと結構センサーノイズが乗ってしまうので、気温にもよるが、シャッタースピードが一分以上の場合はなるべく掛けるようにしている。レンズにキャップをしてダークフレームと呼ばれる真っ暗な画像を撮っておいて、後でPCでセンサーノイズを除去する方法もある。これはこれで面倒くさいので、よほど撮影時間が惜しい時しか使いません。

Yuga Kurita Mount Fuji Lake Tanuki Nikon D5300 Long Exposure_DSC2057

Nikon D5300 w/ AF-S 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR

意外なことにD5300は長秒露光時のセンサーノイズが非常に少ない。長秒露光的には素晴らしいカメラである。上のショットは夜の田貫湖で902秒、つまり約15分露光したが、ほとんどセンサーノイズが無かったので感動した。D800Eで15分やると大変なことになる。センサーサイズが小さいAPS-C機のほうが長秒露光ではノイズ面で有利なのかもしれない。

30秒以上の長秒露光はバルブで行うが、タイマー付きのケーブルレリーズが必要になる。中国製の格安模造品もあるが、中に入っているクリスタルの質が悪く時間がズレる。また、耐久性が悪くすぐに壊れるので結局安物買いの銭失いになることが多い。ちょっと高くても純正(D800シリーズやD4/sはMC36A)を使用することをおすすめします。しかしD3000/D5000/D7000/D600シリーズ用の純正リモートケーブルMC-DC2にはタイマー機能が無いので、サードパーティ製の安いやつを使用しています。激安ですが一年ぐらい使って未だに壊れません。

長秒露光には撮り終わるまでどんなものが出てくるかわからないドキドキがあって楽しい。待っている間はいろいろと思索にふけって欲しい。長秒露光は哲学だ!

WordPressをサブディレクトリ型で多言語化する作業に伴い、20191226日に日本語部分だけを切り離して投稿。

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